純情、恋情、にぶんのいち!



早足が、知らず、駆け足に変わる。

それでも距離が離れることはない。


こんなことなら、変な遠慮なんかしないで、とーご先輩に駅まで送ってもらえばよかった。


はっと、いきなり、昼間ヨウ先生に言われたことを思い出す。


『――きみは、お馬鹿さんで、無自覚で、無防備なんです。気をつけていないとすぐ隙に付け入られてしまいますよ』


先生、おっしゃる通りかもしれません。

怖くて、怖くて、いまにも泣きだしそうになったとき、とうとううしろの人影がすぐ傍まで来ていることに気がついた。


「――…やっ……!」


どうしよう。
どうすればいいの。

なにか方法はないかと視線を左右に動かすと、市民公園のトイレが目に入った。

昼間でも寂しい雰囲気があるのに、暗いなかで見るとますますひっそりしているそれは、いくらトイレに行きたくても入る気が失せてしまうほどの不気味さだ。

だけどいまのわたしに迷う余地などない。

まだ新品に近い茶色のローファーは、一目散にそこを目指していた。


とりあえずここに身を潜めよう。

そして、助けを求めよう。


急いで個室に入って鍵を閉め、すぐに鞄からスマホを取り出す。

スニーカーの足音が、ドアの向こうから着実に近づいてきている。


「……早く、早くしなきゃ……っ」


頼りなく震えっぱなしの指は、それでもなぜか、迷うことなく動いてくれた。

ほとんど無意識だった。
いまはもう、ひとりしか思い浮かばなかった。