「送ってくださって本当にありがとうございましたっ」
「ううん、気をつけて」
「はい、おやすみなさい!」
「おやすみ。ほんとに、ありがとう」
ああ、なんだか夢をみているよう。
とーご先輩にはスグソコなんて言ってしまったけれど、実は自宅は電車に乗って帰らなければならない場所にあって、コンビニから駅まで、もう少し歩く必要がある。
もうすっかり暗いし、中途半端な時間に出てきてしまったせいで同じ学校の生徒の人影もなく、ひっそりとした道のりはなかなかコワイものがあった。
「……早く帰ろ」
それでも、毎日通っている、慣れた道。
非日常の、特別な一日のことを思い出しながら歩いていると、けっこう心に余裕も生まれてきた。
はじめての学祭、本当に楽しかった。
ヨウ先生、それからとーご先輩とヤス先輩もお店に来てくれたし、憧れていた後夜祭にも少しだけ参加できた。
そういえば、ヤス先輩とさーちゃんは、けっきょく後夜祭はどうしたのだろう。
いっしょに参加したのかな。
あした、さーちゃんに聞いてみよう。
嫌がられてしまうかもしれないけど。
そのとき、ふと、背中に人の気配がした。
なんだかわけもなく、全身に鳥肌が立った。
ザ、ザ、と無機質にくり返される、スニーカーがアスファルトを擦る音。
歩みを速めても、その音が遠ざかっていくことはなくて、無意識にますます早足になる。
……どうしよう、なんだかわけもなく、怖い。
「…………っ」
一生分の勇気をふり絞る勢いで、一瞬だけ、ちらりとふり返ってみる。
ぜんぜん、知らない人だった。
暗くて全貌は見えなかったけど、たぶん、男の人だった。
……もしかして、わたし、つけられてる?



