純情、恋情、にぶんのいち!




「ごめんなさいっ!」


待ち合わせの下駄箱に駆け足でやって来たとーご先輩に、わたしはなによりも先にまず、頭を下げた。


「えっ、なに、どうしたの、千笑ちゃん」

「先輩たちのクラス、けっきょく行けなかったから……」


約束してたのに、と言いかけたのを、とーご先輩が「ああ」と少し笑って遮る。


「そんなの気にしなくていいよ。勝手に取り付けたのは泰人なんだし」


本当に、どこまで優しい人なんだろう。

だって、わたしの謝罪に対して、とーご先輩は少し困っているようにさえ見える。


「あの……ヤス先輩にも、謝っておいていただけますか」

「ううん、あいつも特に気にしてないと思うよ。藤沢さんに鬱陶しがられてるのは承知の上で、それを楽しんでるだけだから」

「そ、それは上級者……!」


ふたりで笑いながら、こんな話をとーご先輩としている現実を、やっぱりどうにも不思議に思ってしまった。


「もうすぐ始まっちゃうし、そろそろグラウンド行こっか?」

「あ、はい!」

「エプロンもよかったけど、やっぱり千笑ちゃんは制服がいいね」

「えっ」


お世辞や社交辞令は絶対に口にしない人だと思っていたので驚いた。

ヤス先輩のこと、うらやましいと言っていたけど、とーご先輩も上手ですよ、

そう伝えたくて、隣を見上げて、言葉を失ってしまう。


とてもきれいな先輩の横顔、それが少しだけ赤く染まって見えるのは、きっと沈みかけている夕日のせい、だと思う。