「ガキが楽しむイベントだろ。教員にはそんなもんねえよ」
体育館でエンディングを終えたあと、自由参加でグラウンドに集まって行われる、後夜祭。
ほとんどがカップルだけど、意識しあっている男女で参加して、そこで思いを伝えてつきあい始めるケースもかなり多いのだとか。
ウチの学校の名物イベントだって、入学したばかりのころ、聞いたことがあった。
「……じゃ、じゃあ……じゃあ、化学準備室に、行ってもいいですか?」
先生は黙ってコーヒーを飲み続けている。
それだけで、質問の答えがわかってしまう。
「ダメ、ですか……?」
「ダメだ」
先生は、今度はきっぱりとそう言いきり、紙コップをおもいきり傾けながら、コーヒーをすべて飲み干した。
「せっかくの学祭なんですから、きみも生徒どうしで楽しみなさい」
きれいな仕草で眼鏡をかけ直したあと、ヨウ先生はあの掴めない微笑みで言った。
「本当は、暗くなる前に帰りなさい、と言いたいところですが、どうしても遅くなるようなら必ず誰かに送ってもらうこと。いいですね」
どうしても、はい、とは答えられなかった。
それでも、先生はわたしの答えなど待たないで、忙しそうにどこかへ行ってしまった。
きっとここ以外にも、遊びに行くと約束しているクラスがあるのだと思う。
風のような人だ。
そっとわたしの心を撫でて、ざわつかせるのに、なにもなかったかのようにふっと消えてしまう。
いつも、くやしい。
なんだろう、
……せつない。



