先生の元を離れ、注文のホットコーヒーを運んでいる途中、ヤス先輩とばっちり目が合った。
そして、先生をちらりと見てニヤッと口元をゆがませるから、思わず紙コップごとひっくり返しそうになってしまった。
なんなの、その顔、いったいどういう意味ですか。
「遅かったですね」
「ごめんなさいですーっ」
「おや、まだ拗ねているのですか?」
ご指摘の通り、とてもすねているので、すぐにでも踵を返したかったのに、いきなり手首をそっと捕まえられてびっくりしてしまう。
ヨウ先生、特に、眼鏡をかけているほうの先生のほうからこうして触れられるのは、たぶんはじめてのことだと思うから。
「……っえ、せんせ、」
「きみは、お馬鹿さんで、無自覚で、無防備なんです。気をつけていないとすぐ隙に付け入られてしまいますよ」
「へ……」
様々の人が入り乱れた、ぎゅうぎゅう詰めの空間。
いつもより何十倍も浮足立った雰囲気。
誰も他人のことにかまう暇などないどさくさに紛れて、ヨウ先生の顔が、わたしのそれにぐっと近づいてきた。
息、止まるかと思った。
「――たとえば」



