「かわいい……って、ちょっとは思ってくれてますか?」
どこまでも厚顔無恥な発言だった。
先生はなにも答えず、ウンともウウンとも言わないで、ただ涼しく微笑んだまま、わたしを見下ろすだけだ。
「……なんで、なんにも言わないデスカ」
「いいえ。ただ返事に困ってしまっただけです」
「っ、それはやっぱりカワイイって思ってくれてるってことですか!」
「きみがそう思うなら、そういうことにしておいてあげましょうか」
先生はいつも、しっぽの掴めないしゃべり方をする。
「もーいいです。先生なんか知らないっ」
「すぐに拗ねてしまうなんて本当に子どもですね」
声のトーンが少しだけ低くなったのがわかった。
「大人には、素直に『可愛い』と言えない事情もあるんですよ」
……そんなの、ずるい。
ずるいよ、先生。
だって、それはまるで、本当はかわいいと思っている、と言ってくれているみたいに聞こえる。
「……ずるい、です、せんせい」
「さて、本当にずるいのはどっちでしょうね」
「なん……」
「ホットコーヒーをお願いできますか?」
強引にハンドルをきるみたいに、入口で配布しているメニュー表を、ぽんと手渡された。
もうこれ以上、この議題についてディスカッションするつもりはないという意思表明だ。
「っ、かしこまりました! 少々お待ちくださいっ」



