静かに、それでもまっすぐ向けられたまなざしに胸をときめかせているうちに、ヨウ先生はあっというまにここまで歩みを進めてきていた。
「野村さんに佐藤くんじゃないですか。まだ学祭の準備中でしょう。サボりは感心しませんよ」
「澄田っちぃ。こういうときしかこんなことできないんだからさ、生徒の密会くらい、見逃してくれてもいーんじゃない?」
ね、と優しく肩を抱かれて、さっきとはまったく別の意味で爆発しそうになった。
これくらい、ヤス先輩にとっては朝飯前なのかもしれない。
でも、わたしにとってはかなりの大事で、それをヨウ先生の前で……なんて、全身からサーっと血の気が引いていくのを感じだ。
だめ、ぜったい、なんとしても、おかしな誤解だけはされたくない。
思わず立ち上がり、ヨウ先生をまっすぐ見上げた。
「ち、違いますっ!」
「……なにがです」
「あのっ、ヤス先輩とは、なんでもないんです! ほんとです!」
ヤス先輩は依然として座りこんだままわたしを見上げていたけど、そんなことに気をまわしている余裕などなかった。
ヨウ先生の瞳が、わたしを見つめている。
まっすぐ、静かに、捕らえるように。
「……せんせ、」
「ふっ」
「ええっ」
くすくす、しばらく堪能するみたいに笑うと、先生は困り眉のまま、顔を上げた。
「野村さんは本当に面白いですね」
「え……」
「ふたりとも、仲が良いのは結構ですが、おサボりはほどほどにしなさい」
引き止める間もないまま、先生は行ってしまった。
最後のせりふ、誤解がきちんと解けたのかもわからない。



