「うそうそ、ごめんね」
ぱっと手が離れていく。
それでも、手の甲だけが、火傷したみたいに熱を持ち続けている。
「おれはね、ぜーんぶハジメテな女の子には手出さないって決めてんの」
「……は、はひ」
「だから、チィちゃん、もう少し大人になったらおれと遊ぼうね」
こんなにもイヤラシイ「遊ぼうね」を、生まれてはじめて聞いた。
ショートして、爆発して、プスプスと焦げついた音が鳴っている頭を冷やそうと、力任せに視線を外した先に、
ちょうどヨウ先生の姿を見つけてしまった。
眼鏡は、ちゃんとかけている。
缶コーヒーを片手に歩いている。
これからどこへ行くのだろう?
あっちは……そうだ、化学準備室、だ。
気づけばもう、頭のなかの焦げつきなどすっかり消え去っていた。
どうして、まだ隣に、こんなに至近距離に、ヤス先輩がいるというのに。
たったいま、手の甲にキスをされたばかりだというのに。
なぜこんなにも、全神経を、奪われてしまうの。
「ヨウ先生っ」
自分の意識とはぜんぜん違う場所から出た声みたいだった。
少し探すようなそぶりを見せたあとで、ふっと、その視線がこちらに向く。



