「でもチィ、それにしてはなんか、あんまり元気ないね?」
「うっ……」
いきなり図星を突かれて、ちっぽけなファイティングポーズは粉々に打ち砕かれた。
「だって……学祭ウィークは化学準備室のお手伝いに行けないから」
「あらま。どうしてよ?」
「こういうときはちゃんとクラスに貢献しろって」
きのう、帰り際、眼鏡なしのヨウ先生にそう言われた。
わたしの知っている先生とは似ても似つかず、いつもは教師感なんか微塵もないくせに、急にマジメ教師みたいなことを言ったので、それは本当にびっくりした。
とてもヨウ先生らしい言葉だと思ったから、素直にうなずいてしまったけれど。
でも、ここのところは毎日のように会えていたから、やっぱりそうできなくなってしまうのは、どうしようもなく寂しい。
さーちゃんが隣でため息をついた。
その手元を見ると、貼るのが切るのにいまにも追いつきそうで、わたしもあわてて手を動かす。
「チィ、すっかり澄田に懐いてるね」
「そっ……そうかなあ!? そうでもないよ!?」
「いや、そこはべつにいまさら否定するところじゃないでしょ」
たしかに、そうだ。
わたしはずっとミーハー的にヨウ先生に憧れ続けてきたわけで、お近づきになることが見事叶ったいま、懐いているのはごくごく自然な流れ……かもしれない。
それならばなぜ、いま、こんなに必死になって否定してしまったんだろう?



