こうして先生と並んでコーヒーを飲んでいる放課後を、いまでも夢のなかの出来事のように感じてしまう。
「野村さんたちのクラスはなにをやるんですか?」
「なにって?」
「出し物ですよ。1年生のみなさんは、はじめての学祭ですね」
先生はあまりわたしのことを聞いてきたりしないから、質問されたことについついはしゃいでしまう。
厳密に言えば、これはわたしのことではなく、1年B組のことだけど。
「カフェです! 飲み物だと手軽だし、でもやりようによってはお洒落になりそうだねーって、実行委員のコが提案してくれて」
「そう、いいですね。楽しい子が多いクラスなんですね」
「そうなの! あの、衣装もこだわってて、女子はかわいいエプロンをつけてお店に出るんですよっ」
へえ、と言いながら先生がマグカップに口をつけた。
湯気で眼鏡が薄くくもっている。
「どんなのかわかりませんが、野村さんはきっとすごく似合うでしょうね」
何気ない一言だった。
お世辞、社交辞令。
というより、教師が生徒へ投げかける、適当な肯定のニュアンスに近いかも。
でも、本当にうれしかった。
一日じゅう店番してもいい、と思ってしまうくらいには、舞い上がってしまった。



