「……これ、先生の、」
「“俺とあいつ”の共通な」
ちゃんと“あいつ”に許可は取っているのだろうか。
だって、ずっと憧れていたヨウ先生の電話番号、こんな宝物みたいな11桁を手に入れてしまったら、わたしみたいなミーハーは用がなくても電話をかけたくなってしまう。
「電話……しても、いいんですか」
「意味もなくかけてくるのはやめろ。あくまでも護身用だよ」
――もし、
もしこれからなにかあって、いつか本当にこの番号にコールする日が来たとき、電話に出てくれるのはどっちの先生なのだろう。
そんなふうに、なんとなく、思わずにはいられない。
「気をつけて帰れよ。それでなくともおまえ、トロそうだからな」
わたしを見下ろしてニヤリと笑う。
きっといじわるを言われている。
だけど、これは心配してくれているのだと、めでたすぎる解釈をしてしまう。
「……片づけ、ぜんぜん、終わらなかったです」
「は? いいよ、べつに、もともとする予定もなかったことだし」
「いやです」
先生が目を見張った。
わたしも、自分で、なにをしゃべっているのかよくわからなかった。
「約束したからにはちゃんとやります。あしたからも、手伝いに来ます」
まぬけにオデコにくっついたままの水色。
それをくっつけたはずの手が、べり、と、今度は逆のことをした。
いっきに視界が拓ける。
先生は、面倒くさそうに、あきれたように、息をこぼして笑った。



