いつのまにか東の空が黒へ変わりかけている。
夏が過ぎ、秋になると、あっというまに日照時間が短くなる。
部活動もぽつぽつ終わりつつあるグラウンドのほう、窓の外をぼうっと眺めていると、コーヒーの香ばしさが鼻の奥をくすぐった。
「ミルクと砂糖は?」
「え……」
「残念だが、おまえが期待するような変な薬はひとつも入れてねえよ」
ぽちょん、と。
かわいらしい音を立てて、真っ白な角砂糖が、ひとつ、ふたつ、みっつ、黒い渦のなかへ溶けていく。
「……あ、りがとう、ございます」
「熱いから火傷すんなよ」
先生の入れてくれたコーヒーは、苦さと甘さが同時に混在していて、とても不思議な味がした。
「送ってやろうか」
ひと足先にブラックのコーヒーを飲み終えたらしい先生が、ジャケットのボタンをじれったそうに外しながら、いきなり言った。
「けっこう暗いし、ひとりだろ。それともチャリか?」
「え、あ……徒歩、です。駅からは電車で」
「なら、駅まで送ってやるよ」
あまりに信じらない申し出に、目がチカチカする。



