「もしかして澄田先生となんか約束あった?」
優しいとーご先輩が申し訳なさそうに眉をハの字にする。
心苦しくてたまらなくなってしまう。
「あ……えと、」
どうしよう。どうすれば。
「大丈夫ですよ。上杉くんたちと一緒に帰宅するという約束のほうが先だったんですね?」
助け舟を出してくれたのは、意外にも先生だった。
どうして、と思わずにいられない。
先生のほうを見たら、わたしのよく知っている“ヨウ先生”そのものの顔をしていて、安心よりも先に、
わたしは混乱してしまった。
「ち、が……います。……先生との約束が、先です」
どうしてこんなことを言ってしまったのか、自分でもよくわからない。
たしかに、先生との約束のほうが先にしていたし、とーご先輩たちとの約束のほうが先というのは真っ赤な嘘。
どちらにも居合わせていたさーちゃんにはすぐバレるだろうし、そうしたらもっと問い詰められてしまう可能性だってある。
でも、いまのは、そういうリスクを思って言った『ちがいます』ではなかった。
「……そうですか」
先生がほんの少し目を伏せて笑う。
あんな約束はその場しのぎの嘘だったから、いきなり乗り気になられても困る、という表情かもしれない。



