純情、恋情、にぶんのいち!




一日中びくびくしながら過ごした。

けれど、それからヨウ先生にうっかり遭遇することはなく、それはそれで少しだけ寂しい気持ちもしてしまった。

わたしのなかのミーハーな部分に、ヨウ先生を探す、という習慣が、もう完璧に出来上がっているのだと思い知る。


帰りのホームルームまで無事に終了し、さーちゃんといっしょに支度をしていると、教室の後ろのほうがふいにざわめき出した。

引っぱられるように、なんの気なしにそちらに視線を向ける。

すると、信じられない人と、目が合ってしまった。


「あ! いたいた」


目がテン、になっていると思う、本当に。


「千笑ちゃん、みーっけ」


音になった瞬間どろりと溶けていくような、お砂糖みたいなしゃべり方。

プレイボーイは、どんな女の子の名前も、自分の恋人のように甘ったるく呼ぶのだと思った。


「ヤ、ヤス先輩……?」

「あれ、おれのこと知ってくれてるんだ? うれしーなあ」


軽やかな足取りで、当たり前のように下級生の教室に足を踏み入れつつあるのは、あのとーご先輩の大親友でもあり、自身も相当な数の女子から憧れられている、佐藤泰人先輩。

……だと、思う。
まだ確信は持てていない。

だって、そんな人が、わたしに用事なんかあるわけない。

見た目だけは、本当に、どこからどう見ても、ヤス先輩で間違いないのだけど。