純情、恋情、にぶんのいち!



――思えば、すべての始まりは、この化学準備室。

ドアを引っぱると、窓から差し込むやわらかな春の陽だまりの真ん中に、世界でいちばん大好きな人がいた。


「少し遅かったですね」

「ごめんなさい! クラスのコと連絡先交換してたら遅れちゃって……」


あわててスクバを下ろし、歩を進めようとしたところで、先に視界に先生の靴の先が紛れこんだ。


「じゃ、新学期早々お仕置きだな、千笑」

「へ……?」


いつのまにか眼鏡を外した先生に優しい強さで顎を捕まえられ、ゆっくりとくちびるを塞がれる。
ほんのり、コーヒーの味がする。


「……先生、いきなり変化(へんげ)するの、ずるいです」

「本当にずるいのはどっちだろうな」


誰にも内緒の秘密が恋に変わったら、
その恋が、新しい秘密に変わっていた。


「先生、もう一回……キスしてください」

「なんだ、それは、脅迫か?」


喜びも、幸せも、悲しみも、寂しさも、愛しさも。
半分になって、2倍になって、最後には揺るぎない1になることを、わたしたちは知っている。

先生といっしょだから、そのすべてを大切にできること、わたしは、知っている。


「――はい、脅迫ですっ!」










half of pure heart,
half of love heart.