純情、恋情、にぶんのいち!





無事に2年生に進級することができました。

穏やかな気候の毎日は過ごしやすく、春休み最終日の夜を迎えても、新学期が始まることはそんなに嫌じゃなくて。

残念ながらさーちゃんとクラスは離れてしまったけど、新しい教室には、新しい光景が広がっていて、わくわくで胸がいっぱいです。


「みなさん、そろそろ席についてくださいね」


――そのなかでも、開いた口が塞がらないほど驚いたのは。


「おはようございます。今年このクラスを受け持つ、澄田陽平です。担当教科は化学です。1年間、どうぞよろしく」


ピシッとしたジャケットを身にまとった先生は、しれっと教卓に立って、しれっと出欠をとって、しれっとわたしの名前を呼ぶ。

いろんなどきどきのせいで、たった一言、ハイと答えるのに声がひっくり返ってしまった。

そんなわたしを、みんなにバレないように教壇からちらりと盗み見て、先生が小さく笑った。


ぜったい、ぜったい、知っていたな。

わたしの担任の先生をすること、ヨウ先生は知りながら、秘密にしていたんだ。ひどい人だ。


「ああ、そうだ、放課後、少し手伝って欲しいことがあるのですが、化学準備室まで来てくれる人はいませんか」

「っ、はい!」


考えるよりも先に手を上げていた。


「行きます! わたし、お手伝いします!」


眼鏡ありのヨウ先生。
いつも通り、穏やかに、空気をくすぐるみたいに、ふ、と口元を緩ませる。


「野村さんは元気がいいですね。ありがとうございます。では放課後、お待ちしていますね」


きっとわたしにしかわからない、優しいだけじゃない、ちょっといじわるで甘い微笑みを残して、先生が教室を出て行った。


やはりヨウ先生にひそかに憧れているコは少なくないらしく、女子のうちの何人かには「チィちゃんずるい!」なんて言われてしまった。

でも、ごめんね、こればっかりは、どうしても、誰にも、譲れないんだ。