とーご先輩がいてくれてよかったと、何度思っただろう。
この人がいてくれなかったら、もしかしたらわたしはいまごろ、まだひとりぼっちで泣いていたのかもしれない。
言葉ではとても言い尽くせない。
わたしにはもったいないくらいのものを、この優しい先輩からもらってしまった。
「おれ、千笑ちゃんから、たくさん大事な気持ちもらえたよ。だから千笑ちゃんが幸せそうにしてくれてたら、それで満足。……です、先生」
「……いやいやいやいや! それシラフで言ってんの、冬吾。正気? 頭沸いてない?」
「え……うん、どこも不調はないけど」
「キモッ! 王子様キモッ! 良いやつすぎて鳥肌立つわ!」
「はあ!? せっかく人が真剣にしゃべってんのにおまえはなんなんだよ!」
わたしのような村娘Aにはとうてい手の届かない、ずっと遠い世界にいたはずの、高貴な先輩方。
これからもずっと憧れの存在であることは違いない。
それでも、きっとこれからは、いままでよりももっと近い気持ちで、大切な存在として、憧れ続けていくのだろう。
「なにニヤニヤしてるんだよ」
とーご先輩とヤス先輩のやり取りをぼけっと眺めていたら、ちょっといじわるな声が隣から降ってきた。
「泣いたり、笑ったり、忙しいやつだな」
「だ、誰のせいだと……!」
がばりと視線を上げる。
対抗しようとしたら、思いのほか優しいまなざしがすでにこちらを見下ろしていて、戦意などどこかへ吹っ飛んでいってしまった。



