「っ、さーちゃん、おはよう……!」
「どうしたの?」
微妙に詰まりながら挨拶したわたしに、さーちゃんが少し不思議そうな顔をする。
「おはようございます」
「あ、おはようございます、澄田先生」
先生がさりげなく、さーちゃんの視線を自分のほうへ移させた。
たぶん、わたしがよけいなことを言わないでいるうちに、先手を打ったのだと思う。
「きのうからチィの様子がなんか変なんですけど、もしかしてなにかありました?」
でもそんな小手先のこと、藤沢さやかサマには通用しないみたいだ。
右眉だけをくいっと上げ、疑り深く眼鏡の奥の瞳を探ろうとしている横顔は名探偵さながらで、なぜだかわたしのほうがドギマギしてしまう。
ヨウ先生の顔は、とても、恐ろしくて見られない。
「いいえ、なにもありませんよ。ねえ、野村さん」
それでも呼びかけられて無視するわけにもいかない。
さーちゃんの肩越しに恐る恐るチラリと視線をむけると、まんまとその瞳に捕まってしまった。
やっぱり優しい顔だ。
悪意も殺気もウラもなにも感じられない。
「ただ、放課後、片づけを手伝ってくれるっていう話をしていただけですよね?」
「えっ!」



