そういう弟が、勉強やスポーツにおいて、少しでもなにか功績を残せば、これでもかというほど褒めちぎられた。
対する俺が、なにかほんの少しでも失敗をすれば、この世の終わりかのように失望された。
おまえはあいつと違って出来がいいはずなのに――
その言葉が、責めたてるような目が、失望が滲む口元が、だんだん俺を、殺していった。
そうして作り上げた、“もうひとり”の存在。
“彼”がいなければ、“あいつ”がいなければ、すでに澄田陽平はここに存在していなかっただろう。
品行方正、まじめで穏やかな自分と、欲望にのみ従って生きていく自分。
いまとなってはもうどちらが本物かなどわからない。
そんなことを考えるのは途中でやめた。
考えないようにしても、毎日、毎朝、毎晩、恐ろしかった。
大学生になり、父と同じ教師という道を選ぼうとしている自分に、半分ではこれ以上ないほど満足して、半分では死ぬほど嫌気が差して、そうしていたら眠れなくなった。
自分は病気なのだと思った。
耐えられなくなり、受診した病院で、病気だと、医師に告げられた。
とてもほっとしたし、一方で、不安で仕方なくなった。



