「おまえじゃないと嫌なのは、もうずっと前から、俺のほうだよ」
先生が低い声で言った。
「全部を捨ててでもおまえが欲しいと本気で思ってる。……もう、おまえだけでいい」
どうしようもなく切ない顔を目の前にして、これ以上、どう疑えと言うの。
先生の首に抱きついていた。
考えるより先に、わたしの両腕がそうしたいと叫んでいた。
「……わたし、先生を好きでもいいんですか……?」
「そうじゃなきゃ困る。“俺たち”には野村千笑が必要なんだ」
ああ、もうずいぶん会っていないような気がする眼鏡ありの先生、
彼は、元気ですか。
彼のほうも、あなたのほうも、わたしを、好きでいてくれるのですか。
どっちの先生のことも、わたし、好きでいていいのですか。
手を離さないでいても、いいのですか。
「……少し、話してもいいか」
ふたりのあいだにもういちど距離が生まれて、見上げたら、先生が静かにそう切り出した。
「どうせなら、いちばん最初っから」
言いながら、さーちゃんとヤス先輩、とーご先輩のほうへ体をむける。
大切な教え子たちをぐるりと見渡したヨウ先生は、どうしようもなく、教師の顔をしていた。
「おまえらにも聞いてもらいたい。もう隠す必要もねえだろう」



