「あした、目が覚めたら、澄田先生のところに行こう」
目を閉じて、自分の鼓動の音を聞いていた。
たぶん決して正しくない音、それでも恐ろしいほど規則正しく動いているそのリズムに、乗っかるというよりは落ちてくるみたいに、とーご先輩が唐突にそう言った。
「そうじゃないとおれが強制的に千笑ちゃんを奪いにいくから」
「えっ」
「それは冗談だけど」
「ええっ」
めずらしく大胆なことを堂々と口走っておきながら、最後にはいつもの困った顔をして笑う。
「……でも、半分は本気だよ。だからこれは、おれのわがままでもある」
本当に……この人は、どこまで。
「じゃあおれも一緒に行こうかな」
複雑な気持ちでじーんと心を震わせていたら、今度はヤス先輩がのんびり言った。
「ヤ、ヤス先輩まで……」
「おれとさやちゃんは澄田っちをドヤす係だからね」
「ええっ」
「だからチィちゃん、こんなに最強の護衛がいるんだし、なんにも心配しないで、安心していいよ」
なんでもジョークみたいに言うけど、ヤス先輩が本当はとても心優しくて、情に厚いこと、もう知っている。
この人が女の子からすごくモテるのは、単に甘い媚薬を持っているせいだけじゃないと思う。
すごいなあ。
わたしの世界は、いろんなひとに支えられながら出来上がっているんだなあ。
ひとりぼっちじゃないんだなあ。



