『――おまえも連れていくから。一緒に行こう』
『――絶対、迎えに来る』
なにも、知らないくせに。
先生のこと、先生と麻里香さんのこと、わたしは、知ろうとさえしなかったくせに。
傷つくのがこわくて、
面倒なコだと思われるのが嫌で、
イイコでいたくて、
いつか先生がわたしの前から消えてしまうのが怖くて、
ぜんぶ見ないふりをして先に逃げだしたのは、わたしのほうだ。
「結局、チィの澄田に対する気持ちなんてその程度だったってことでしょ」
「……ち、がう」
「違わないよ」
「違うもんっ!」
さーちゃんは、左の肩にあるヤス先輩の手のひらをそっとどかして、それから、ぎゅっと包みこんだ。
「半端なんだよ。本当に欲しいなら、どれだけ傷だらけになろうと、いつか失うことになろうと、最低な人間になろうと、情けなくてダサかろうと、手を掴み続ける根性くらい見せたらどうなの」
ああ、そういえば、最近は自分のことでいっぱいいっぱいで、さーちゃんの話を聞く時間さえロクに持つことができなかった。
「そうしてくれないと、わたしが、手放しでチィの味方でいられなくなるでしょ」
わたし、ずっと、ぜんぶ、自分のことばっかりだったんだ。
すごく恥ずかしい。
とても、悲しい。



