「チィ!」
さーちゃん、とこっちが呼ぶ前に怒号が飛んできて目がチカチカする。
彼女は、もう完全に、完璧に、怒っていた。
「この状況を説明しなさい!」
「は、はいぃ……っ!」
まさに鬼の形相。
まあまあ、となだめるヤス先輩のことは完全に無視して、わたしに詰め寄るさーちゃんは迫力マンテンすぎる。
「……お、怒らないで、聞いてくれ、マスカ」
「場合によっては怒る」
「う……」
「話さないならもっと怒る」
「ううっ……」
どこから話そうか。なにから、どれから。
先生のこと、なんと説明するのが正解? 麻里香さんのことは?
「……え、と」
マフラーとコートを脱ぎながら待っているさーちゃんの表情は、やはり鬼の形相ではあるものの、それ以上にものすごく真剣だ。
ああ、こんなに真剣に怒って、本気で気にかけてくれる友達は、きっとなかなかいないだろうな。
人ごみのなかで座りこむ背中に声をかけてくれる優しい先輩も、なんでも見透かしちゃう頼れる先輩も、きっと、どんなに探したって、そうそう見つかるものじゃない。
「……あの、ね……」
だから、最初から最後まで、話してもいいのかもしれない。
ぜんぶ、ぜんぶ、この人たちに、なら。



