純情、恋情、にぶんのいち!



すぐ傍にある美しいお顔をぼうっと見上げていると、突然、別なキラキラオーラが降ってきた。


「泰人、手!」

「わーお。見つかっちった?」

「見つかるもなにも、おまえは絶対わざとだろ!」

「やー、バレた?」


ゆるゆると離れていくヤス先輩の手のひら。
温もりが消えた左の肩が、なんだか少しだけ肌寒い。


「じゃ、次はおれが打っちゃおっかなー」


財布から小銭を取りだしたヤス先輩が立ち上がる。

シロウトと言いながら、きっととーご先輩といっしょに打つことも少なくないのだろう、ヤス先輩は飛んでくる白球をとても軽々と打ち返し始めたのだった。


「千笑ちゃんも打とうよ」

「え……でも、」

「絶対楽しいよ。打てなくてもそうだし、打てたらほんとに気持ちいい!」


手を引かれて、バッターボックスまで連れていかれる。
80キロの球を放るレーン。ぜんぜんダメで、笑えてくる。


その隣でとーご先輩が130キロの球を難なく打ちはじめた。

野球はもうやめてしまったと言ったけど、中学時代はきっとすごい選手だったのだろうなあ、と勝手に想像してしまう。


いつのまにか全身が痛い。

手持ちのお金がなくなるまで延々と打ち続けていたら、外に出たときにはもう、空が暗かった。