「――大丈夫ですか?」
「……え……」
「気分悪いですか?」
降ってきた声はとても丸っこくて、やわらかくて、それでいて、
……そう、キラキラ、している。
「……せんぱ、どうして……」
「え?」
「と、とーご先輩……」
「えっ、千笑ちゃん!? どうしたの!? なんで!?」
見上げた先に、変わらない、とても端正なお顔。
それが本当に驚いたような色をしているから、じんと胸が震えて、どうしようもなくなってしまった。
とーご先輩は、わたしだと気づかず、知り合いだとも思わず、ただ困っているだろうと思って、声をかけてくれたんだ。
どこまでも優しい、とーご先輩らしくて、思わずドバっと涙が出た。
「うわ、ちょっと待って、ここで泣くのはナシ! 荷物持つから移動しよう。立てる?」
「……ふぁい……」
大きな重たいキャリーバッグを右手に持つと、左手にわたしの手のひらを掴み、とーご先輩は歩き始めた。
さっきよりもスムーズに人ごみを歩いていける。不思議なくらい。
ひとは、さみしいときよりも、優しさに触れたときに涙が出るのかと、先生よりもひとまわり華奢な背中を見つめながら、そう思った。



