純情、恋情、にぶんのいち!



とてつもなく嫌な予感がした。

説明はできない。
これが、女の勘なのか、第六感というやつなのか。


「……出な、いで」


誰からの着信か、
名前を見なくとも、理解してしまう。


だって、先生の顔色が、変わった。

瞳が、口元が、指が、不自然にぴくりと反応したのを、わたしは見逃さなかったよ。


――先生、麻里香さんからの着信ですよね。


「…………」

「…………」


あんなに早く過ぎているように思えた時間が、いまはまるで一時停止しているかのよう。

どうしていっこうに、着信は終わらないの?


「……、ごめん、ちょっと」


先生は、ふっと、わたしから視線を外すと、ひとりで車を降りてしまった。


じわり、視界がにじむ。
見つめている車のダッシュボードがどんどんぼやけていく。

だけど、いま泣いてしまったら、本当にダメになってしまうことを認めるような気がして、必死に我慢した。


薄いガラスのむこう側からかすかに先生の声が聴こえる。

優しい、低い声。


たまらず、ぎゅっと耳を塞いで、背中をまるめて、自分の太ももにうずくまった。