「――ちょっと早く着きすぎたな」
駅のパーキングに車を駐車し終えた先生が腕時計に視線を落とす。
けっこうのんびり来たけど、道が空いていたせいで、どうやら電車の時間までまだ少しあるらしかった。
「どうする? 駅ナカでもぶらつくか」
「……ううん」
「ん?」
「車のなかで待ってたいです。せっかく先生とふたりきりなんだもん」
せわしなく次々と駅に吸いこまれていくサラリーマンたちを、まるでスクリーンの向こうの映像みたいに思った。
ううん、違う。
もしかしたら、きょうはわたしたちのほうが、スクリーンのなかの世界にいるのかもしれない。
「……先生、好きです」
「わかってるよ」
怖いくらいに幸せで、優しく、甘い時間は、いつだって驚くほど早く過ぎてしまうものだ。
それは、まるでタイミングを謀ったみたいだった。
そろそろ降りようか、と先生が言ったまさにその瞬間、先生のスマホが振動を始めたのだった。



