純情、恋情、にぶんのいち!




先生との待ち合わせは、少し離れた場所にある公園で。

家族のいる家だとなにかあったときに怖いから、と、それは満場一致の意見だった。


めずらしく早起きしてテキパキ準備をするわたしに、お母さんも機嫌が良さそうだ。

新学期からは自分で目覚ましをかけて起きてみようかと思う。


「いってきまーす」

「はい、いってらっしゃい、楽しんでね、さやかちゃんによろしくね」


嘘ついてごめんなさい、
と心のなかでのみ謝って家を出た直後、万幸がパンをかじりながらあわてて追いかけてきた。


「お姉ちゃんっ、置いていかないでよー」

「べつに置いてったわけじゃ……」

「そんなに彼氏に会わせたくないわけ?」


絶対に会わせたくない、というわけでもないけど。

やっぱり、家族に好きな人を紹介するのは、なんだか少し気恥ずかしいわけである。


「お姉ちゃんがはりきって早起きして、がんばってお洒落しちゃう相手がどんな人なのか、妹としてはどうしても気になるじゃん!」

「おもしろがってるだけでしょお!」


万幸としょうもない言い合いをしているうちに、公園にはすぐ到着してしまった。

見慣れた黒い車の傍に、同じ黒のジャケットを着た、世界でいちばん好きな人。


「……うわお、すごいオーラあるじゃん」


隣で万幸がぼそりとこぼす。

先生は、予想外のもうひとりの存在に、驚いているような、困惑しているような、なんとも言えない表情を浮かべていた。