「……ちょっと、チィ、固まってるよ」
「………………」
「おーい、チィ?」
目の前でなにかがひらひら動いている。
開ききった瞳孔が映しだしている、ぼやけた視界が、徐々にピントを取り戻していく。
「はっ!」
とーご先輩とヤス先輩の姿はいつのまにか消えていた。
周りのギャラリーたちに、ものすごくジロジロ見られているのを、痛いほどに感じる。
体育祭の非日常的な感じにワクワクしていたとはいえ、きょうはあまりにも非日常な出来事が起こりすぎて、本格的についていけなくなってきた。
「上杉先輩って、見かけによらずわかりやすいんだね」
「なにが!?」
「……。……チィみたいなおばかさんにはちょうどいいのかもね」
「だから、なにが!?」
もしかしたら、わたしの知らないうちに、地球が逆向きに回り始めたのかもしれない。
だって、そうじゃないと説明がつかない。
とーご先輩にこんなふうにしてもらうことも、それから、ヨウ先生にあんな一面があることも……
……ああ!
そうだ、ヨウ先生のこと、とーご先輩のおかげですっかり忘れていたけど、アッチはなにひとつとして解決していないのだった。



