先生はわたしをソファに座らせると、自分はカーペットに膝をつき、それからそっとわたしの前髪をかき上げた。
それでも顔は上げられない。
こんな酷い顔、見られたくない。
「千笑、」
「……っ、……く……ひ、」
先生にとってわたしは、限りなく子どもで、どうしたって、生徒で。
秘密を握られてしまったから、仕方なく、相手をしてくれているだけで。
なにをしても、なにを言っても、わたしが懐きすぎるから、諦めただけで。
そんなこと、ぜんぶ、わかっている。
わかっているけど……。
「……ごめん、なさ、い」
嗚咽しながらしゃべっているせいで、おかしなところで言葉が途切れて、うまく伝えられない。
それでも先生はわたしを抱き寄せた。
「勝手に、勝手に……来たり、して、ごめ、」
「いい」
「っ……せん、」
「謝るのはおまえじゃない」
鼻いっぱいに先生の香りがする。
かすかなコーヒーのにおい、わたしの大好きな大人のにおい。
「ずっと気付いてた。おまえがどうしようもなく不安がってること」
ぎゅっと抱きしめてくれる腕は、強くて、優しくて、あたたかくて、気づけば抱きしめ返していた。
とめどなく溢れる涙が先生の肩に水たまりを作っていく。
それでも先生は、そんなことにはかまわず、わたしが落ち着くまでずっとそうしてくれていた。



