少し前から抱き始めた疑問をかき消すように、ぎゅっと、その首に腕を回した。 「……気にしなくていい」 先生はなにも変わらない。 わたしの髪に触れて、額にくちびるを押し当てて、ふ、と笑った。 「……帰る」 「ん、じゃあ早く支度しろ」 先生のなかには絶対的に踏みこめない場所がある。 先生は、その場所を見せてはくれないまま、きっといつかわたしの前からいなくなってしまうのだろう。