先生、本当はわたし、なにに違和感を抱いているのか、ちゃんとわかっているよ。
「……っは、せんせ、」
「もうギブか」
「だって……」
「おまえは本当にいつまでたってもお子ちゃまだな」
彼女と再会してからというもの、放課後この場所でわたしを待ってくれているのは、必ず眼鏡を外したほうの先生だということ。
最近は、学校のなか、みんながいるときしか、眼鏡をかけたヨウ先生と会わなくなった。
『――私、眼鏡かけてる陽平先生のこと、すごく嫌いで、許せなかったんだ』
それは、彼女が苦々しい表情で教えてくれたそのことと、なにか関係がありますか。
「もう暗くなってきたから帰るぞ」
「……っ、やだ……」
たったそれだけのことに、こんなにも不安になってしまうのは、やっぱりわたしが子どもだという証ですか。
「まだ帰りたくない……」
先生は絶対にわたしには困ってくれない。
口元だけで薄く笑うと、わたしの髪をそっとかき抱いた。
「わがまま言うんじゃねえよ」
「う……はい」
こんなふうにされたら、駄々っ子なんてできない。
わがままは、言えない。
わたしに困ってほしいのに、困らせたくなくて、どうしたらいいのかわからなくなる。
「あ……先生、」
「ん?」
「スマホ……」
触れているところから感じる、規則的な振動。
以前はほとんどと言っていいほど無かったそれを、最近よく感じるようになった。
先生は、スマートホンを、こんなにも肌身離さず持ち歩く人だっただろうか。



