▽
▽
“それ”はとてもゆっくりで、けれど、たしかなものだった。
「先生……」
「なんだ」
不安になってしまうのはわたしが子どもだという証拠ですか。
先生のほうは、怖いくらいに完璧に、いつも通りの態度を崩さないで、わたしの髪を一束すくっていく。
放課後の化学室。
ぜんぜん、普段となにも変わらないはずなのに、日に日になにかが変わっていっているような気がするのは、なぜだろう。
「なんだよ、言ってみろ」
向きあうかたちでわたしを膝の上に乗せたまま、先生は耳元にくちびるを寄せた。
小さなかわいい音を立てると、それはすぐに離れていった。
「……せんせ、最近、」
先生は最近おかしい。
なにが、と聞かれても、うまく答えられないから困るのだけど。
「ん?」
だって、使う言葉も、しゃべる声のトーンも、少しいじわるな笑顔も、指先の冷たさも、ぜんぶ、ぜんぶ、おんなじ。
胸に顔を押しつけてふるふるかぶりを振る。
そっと頬を指先で触れられ、呼ばれるように顔を上げると、今度はくちびるにキスが落ちてきた。
するり、と熱が侵入してくる。
冷たい指先と裏腹の温度に火傷しそうになる。
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“それ”はとてもゆっくりで、けれど、たしかなものだった。
「先生……」
「なんだ」
不安になってしまうのはわたしが子どもだという証拠ですか。
先生のほうは、怖いくらいに完璧に、いつも通りの態度を崩さないで、わたしの髪を一束すくっていく。
放課後の化学室。
ぜんぜん、普段となにも変わらないはずなのに、日に日になにかが変わっていっているような気がするのは、なぜだろう。
「なんだよ、言ってみろ」
向きあうかたちでわたしを膝の上に乗せたまま、先生は耳元にくちびるを寄せた。
小さなかわいい音を立てると、それはすぐに離れていった。
「……せんせ、最近、」
先生は最近おかしい。
なにが、と聞かれても、うまく答えられないから困るのだけど。
「ん?」
だって、使う言葉も、しゃべる声のトーンも、少しいじわるな笑顔も、指先の冷たさも、ぜんぶ、ぜんぶ、おんなじ。
胸に顔を押しつけてふるふるかぶりを振る。
そっと頬を指先で触れられ、呼ばれるように顔を上げると、今度はくちびるにキスが落ちてきた。
するり、と熱が侵入してくる。
冷たい指先と裏腹の温度に火傷しそうになる。



