純情、恋情、にぶんのいち!





“それ”はとてもゆっくりで、けれど、たしかなものだった。


「先生……」

「なんだ」


不安になってしまうのはわたしが子どもだという証拠ですか。

先生のほうは、怖いくらいに完璧に、いつも通りの態度を崩さないで、わたしの髪を一束すくっていく。


放課後の化学室。

ぜんぜん、普段となにも変わらないはずなのに、日に日になにかが変わっていっているような気がするのは、なぜだろう。


「なんだよ、言ってみろ」


向きあうかたちでわたしを膝の上に乗せたまま、先生は耳元にくちびるを寄せた。

小さなかわいい音を立てると、それはすぐに離れていった。


「……せんせ、最近、」


先生は最近おかしい。

なにが、と聞かれても、うまく答えられないから困るのだけど。


「ん?」


だって、使う言葉も、しゃべる声のトーンも、少しいじわるな笑顔も、指先の冷たさも、ぜんぶ、ぜんぶ、おんなじ。


胸に顔を押しつけてふるふるかぶりを振る。

そっと頬を指先で触れられ、呼ばれるように顔を上げると、今度はくちびるにキスが落ちてきた。

するり、と熱が侵入してくる。
冷たい指先と裏腹の温度に火傷しそうになる。