「でも、完全にわたしの片想いで、陽平先生の実習が終わるのと同時に押し切って“つきあってもらってた”感じだったんだけどね」
なんだか思い当たるフシがありすぎてめまいがする。
「わたしね、あんまり家庭環境がよくなくて、特にお父さんと上手くいってなくて、そのことでずっと陽平先生に相談に乗ってもらってたの。もしかしたら先生にもどこか共感できるところがあったのかもしれない」
現在ヨウ先生の生徒であるわたしの手前、濁すように不確定な言い方をしたのだろうけど、きっとこの人は先生のすべての事情をわたし以上に把握している。
それが悔しくて、つい「知ってます」と言ってしまった。
ぜんぜん、なにも知らないくせにバカみたいだ。
彼女は少し驚いた顔をして、それからすぐ、納得したようにうなずいた。
「あー、そっか、よく考えたらそうだよね、眼鏡かけてないほうの陽平先生と一緒にいたんだもん」
この人は、どういう経緯で、どのタイミングで、ヨウ先生の秘密を知ったのだろう。
先生のどういうところを好きになったのだろう。
「……わたし、眼鏡かけてる陽平先生のこと、すごく嫌いで、許せなかったんだ」
彼女はとても苦しそうに、それを言うのも辛そうな顔で、絞りだすみたいに言った。



