純情、恋情、にぶんのいち!





噂をすればなんとやら――

ということわざを作った誰かを、心の底から恨んだのは、きっと、後にも先にも、この瞬間だけだと思う。



「――陽平先生……」



淡い水色のコートがよく似合う、とてもきれいな女性だった。

たぶんわたしより年上だろうけど、どこか幼さの残るその顔を見て、なんとなくでも、一瞬で理解してしまう。

ヨウ先生のこと、わたしと同じように“先生”と呼んだけど、きっとこの人はただの生徒じゃない。

この人は、もしかしたら、先生の……


「――…まり、か?」


きょうも、いつも通りの帰り道になるはずだった。

ううん。ひょっとしたら、いつもより少しだけ幸せな帰り道になっていたかもしれない。

だってきょうは、送ってもらう車のなかでホワイトデーの旅行の行き先を相談するつもりで。


タイミングって、どうしてこう、おかしなところで上手いことかみ合ってしまうのだろう。


「陽平先生……っ、会いたかった……!」


姿を認め、名前を呼ばれただけで、涙ぐみながら先生の胸に飛び込んできたその人を見て真っ先に覚えた感情は

――“恐怖”、そのもの。


だって、先生のこんなふうな戸惑いきった表情を見るのは、これがはじめて。

先生の胸に収まり続ける彼女のことを、先生の手のひらが、抱きしめたいと言っていた。


「……麻里香(まりか)