「行きたい! ですっ!」
日常を離れて、こことはぜんぜん別の場所へ行くということ。
それは、ほかのどんな恋人たちがそうするよりも、ずっと意味のあることのような気がしてしまう。
だって、わたしが好きになった人は、わたしの先生だから。
「じゃ、どこ行きたいかちゃんと考えとけよ」
「先生は?」
「ん?」
「どこに行きたいですか?」
「俺はどこだっていいよ。おまえの行きたいところで」
それは、たぶん先生的には優しさのつもりで言ってくれたのだろうけど、ふたりの計画を放棄されたみたいで、ほんの少しだけ勝手にさみしい。
わたしは、先生といっしょだったら、砂漠でも、アマゾンの奥地でも、土星でも、どこにだって、飛んで行くのにな。
「じゃあ、先生の行ったことない場所はどこですかっ」
「そんなもんありすぎていちいち挙げてたらキリねえよ」
「えー……じゃあ逆に、行ったことある場所は?」
なぜか、にやりと左の口角が上がった。
とびきりのいじわるを言う前の顔。



