それでも……それでも、
このなかに、わたしみたいな、本気で先生に恋してる女の子からの“本命チョコ”もあるのかと思うと。
「やっぱり……ちょっとだけ、複雑です」
眼鏡を外したままの先生がフンと笑う。
その顔に、ガキだと言われている。
だけど、そんなことを言ったって、複雑なものは複雑なので、どうにも仕方ないのである。
「だって、先生、ホワイトデーのお返しもちゃんとするタイプでしょ」
「まあ、そりゃあな。それ目当てで教師にばら撒いてるやつもいるだろうし」
なにをあげるんですか、とか、そんな子どもっぽいことは絶対に聞きたくない。
いや、まあもうすでに、限りなく子どもっぽいのには違いないのだけれど。
「なにが欲しいか考えとけ」
そして、こんな言葉ですぐに機嫌が良くなってしまうのも、わたしが子どもだという確たる証拠だ。
「っ、それって、わたしのは特別に用意してくれるってことですか」
「ほかのやつと同じがいいならそれでもいいが」
「いやです特別がいいです!!」
先生の椅子の滑車がごろりとうしろに動き、その分だけ空いた隙間に、わたしの居場所を作ってくれた。



