純情、恋情、にぶんのいち!



こういうところもずるい。

前触れなく訪れる、眼鏡のある・なしのスイッチの切り替えにわたしが弱いということを、きっと先生はちゃんと知っている。


これ以上の攻防戦を続けても、たぶんわたしの負けは確定しているので、取り上げていたケーキをしぶしぶ机の上に戻した。

よくよく見ると先生の椅子の傍らには大きな紙袋があった。
ちょっと見ただけで中身が見えるほど山盛りだ。


「……ほんとに、たくさん、もらったんですね」

「ん? ああ」


きょうは朝からとーご先輩とヤス先輩もたくさんの女の子から声をかけられているのを見かけたけど、ヨウ先生という人は、そのふたりにも負けず劣らずの人気を誇っているんだった。

優しくて、穏やかな、かっこいい、化学の先生。

わたしだってずっとそういう先生に憧れているうちのひとりだった。


「ぜんぶ、食べる、ですか?」

「そうだな、ぼちぼち。可愛い生徒たちからもらったもんだし」


わかっている。それはしょうがないことだ。

眼鏡があっても、なくても、先生は生徒からもらったチョコを食べずに捨てるような人ではない。


「なんだよ、食ってほしくないか?」

「ち、違います!」


わたしだって、べつに、そうしてほしいと望んでいるわけでもない。