「……先生、もうひとつ、お話がある……です」
「……もうひとつ?」
「はい……」
先生はわたしの肌からくちびるを離すと、瞳で問いかけるようにわたしを見上げた。
ぎゅっと両手を組むと、先生の左の手のひらが、上からそっと包んでくれた。
「……あの、」
「はい」
「わたし……とーご先輩に、好きだって言われました」
「……そう」
先生はそれ以上の反応はせず、黙ったまま。
不安になって思わず見上げると、いつもと変わらない穏やかな表情は、あきれたようにわたしを見つめていた。
「……先生?」
「きみは本当にお馬鹿さんですね」
「えっ?」
「上杉くんがきみを好きなことなんて、ずっと前から知っていましたよ」
「ええ……!!」
そんな、バカな。いったいどうして。
先生がふっと笑った。
その表情に、また「おばかさん」と言われている気がした。



