「――なにか、言い訳は?」
化学準備室のドアを開けるなり、冷たい声がぴしゃりとわたしを殴った。
それでも先生は、こちらを見ることもなく、作業する手を止めないから、本当に恐ろしくなってしまう。
「……せんせ、」
「…………」
「ごめんなさい……」
キィと鳴いた椅子が回った。
こっちをむいたヨウ先生は、眼鏡をかけているけど、もう“教師”の顔をしていなかった。
「それは、言い訳をするつもりはないという謝罪でいいのですね」
「えっ……」
「見たままの状況ですべてを理解してもいい……と。そういうことですね」
ちがう。ぜんぜんちがう。
なのに、上手に言葉にならなくて、ぜんぶ喉に引っかかってしまう。
苦しい。
「……ごめん、なさい」
はあ、とため息をつきながら、先生は立ち上がり、こちらに歩を進めた。
うつむいている視界に靴が入りこむ。
なんとなく見ていられなくて、ぎゅっと目を閉じた。
けれど先生は、相変わらず冷たい指先で、そっとわたしの髪に触れただけだった。



