……ああ、そうか、わたし、こんな素敵な人に、好きになってもらえたんだなあ。
「……千笑ちゃん」
「はい」
「ごめん、もう少し……このままでいてもいいかな」
「え……」
「……ごめんね、もう少しだけ」
こんなに素敵な人に好きになってもらったのに、それでも、その想いに応えられなくて。
そしていま、こんなふうに、とーご先輩の優しさに甘えてしまって。
自分のこと、世界一ずるくて最低な女だと思う。
このあたたかい腕を振りほどけないのは、わたしが優しい子だからじゃない。
「――もう施錠してしまいますよ」
ゆったりとした、穏やかな時間を止めたのは、もうずいぶん聴き慣れた声だった。
ぽつりと落ちた静かな波紋が頭のなかを真っ白にしていく。
だって、わたしがこの声を聴き間違えるはずがない。
「……せん、せい」
体を離して視線を送ると、ベッドの傍らで、眼鏡をかけた先生が、わたしたちを見下ろしていた。



