「簡単だよ。おれがヴィランズになって、冬吾をヒーローにしたかったんだ。大ピンチのプリンセスを助けに来てくれるヒーローの大一番を作りたかった」
「うすうす気づいてましたけど、あなた、けっこう頭湧いてますよね」
その湧いた場所を沈めてくれるように、髪を撫でてくれる手のひらが優しくて、もういっそ泣いてしまおうかと思う。
「……帰りましょう、佐藤先輩。あなたはヴィランズじゃなくてモブです。ちなみに、わたしもモブです」
「ええー。それいちばん最悪なやつじゃん」
これは、贖罪だ。
だから、どうか、いま救われているのがおれだけではありませんように。
それ以上のなにかが、冬吾の上に降り注いでいますように。
そういう自分勝手な祈りを込めて、頭の上にある手を握った。
強い意志のありそうな、きっと誰にも媚びたりしない指先。
それでも、それはどこか繊細な手ざわりをしていて、おれも、おれだけのプリンセスにとってのヒーローになってみたい、と。
そんな厚かましいことを、たしかに願ってしまったのだ。
―――― YASUTO.
▽
▽



