「ふ……っざ、けんな!」
王子様の風貌なんか微塵も残していない、怒りに満ちた、それでいて泣きそうな顔をして、冬吾がおれを睨みつける。
思わず口元を緩ませると、その手のひらが、躊躇いもせずにおれの胸倉を掴んだ。
「千笑ちゃんには手出すなって言っただろ!」
「あれ、そうだっけ?」
「っ、そうだよ!」
そうだな、約束、破ってごめん。
怯え、震え、涙を流すチィちゃんを横目に見て、ちくりと胸が痛んだ。
ごめんな、冬吾も、チィちゃんも。
「はーいはい、おれが悪かったよ。ジョーダンじゃん。でも、チィちゃんすっごく怯えてるから、冬吾が慰めてあげてな」
「泰人……おまえ、」
「ごめんね、チィちゃん。もうコワイこと絶対しないよ。約束する」
泰人の恋を実らせるためだとか、それは本当に建前じゃなくて、
――だけど。
「……ごめんね、冬吾」
届いていたかはわからない。
それでも、中2の夏から伝えたかったありったけを込めて、おれはその言葉をつぶやいた。



