――だから、これは贖罪だ。
「ヤス先輩?」
天使が舞い降りてきたのかと思った。
忌々しい記憶をノンストップで思い出したせいで、昨夜からずっと体調が優れない。
放課後、中庭の木陰でぐったりしていたおれに話しかけてくれたのは、目を真っ赤に腫らしたチィちゃんだった。
「……ああ、チィちゃん。どーしたの」
「それはこっちの台詞です。顔色、ものすごく悪いです」
「あー……うん、ちょっと、めまい」
こんなへたくそな言い訳を信じてしまう、バカな女の子。
チィちゃんは、冬吾と同じ、“アッチ側”の人間だ。
「保健室、行きますか?」
宝物のような手のひらが差しだされている。
指先だけで触れてみると、それは、とてもやさしい温度をしていた。
「……チィちゃんが連れてってくれるの?」
「もちろんですっ。こう見えて実は保健委員なので!」
ああ、本当にバカな子なんだな。
おれみたいなやつにも惜しみなく優しくするなんて。



