おれが彼女を抱いたのは夏の終わりのことだった。
忘れもしない、蝉が煩く鳴いている、蒸し暑い夕方の風景。
ひょっとしたらおれも、冬吾と同じように彼女を好きだったのかもしれない。
でも、きっと、そんな美しい想いではない。
だから、何故こんなことをしたのかと泣きながら問う彼女に、おれはなにも答えられなかった。
答える資格すら持っていなかった。
あのコとヤったよ、
なんて、よく簡単に言えたものだと思う。
冬吾の瞳は軽蔑に濡れ、そして、深く傷ついていた。
好きな女の子を、親友だと思っていたやつに汚された悲しみ。
それは想像以上に深く、重く、痛かっただろう。
冬吾が生まれてはじめておれに怒鳴った。そして泣いた。
おれは、やはりなにも言えなかった。
恋愛が絡んでくると、冬吾が「おれは泰人とは違う」と口癖みたいに言うようになったのは、ちょうどこのころからだ。
すべての原因はおれにある。
冬吾も、彼女も、そしておれ自身さえも、誰ひとりとして救われない選択をしたのは、おれだった。
それでも優しい冬吾はおれを受け入れてくれた。
泰人は“そう”だから仕方ないのだ、と、おれを許してくれた。
なんて純粋で優しいやつなのだろう。
おれは、冬吾のそういうところが大好きで、大嫌いなんだ。
だから、おれはあのときから、ブレることなく“そういうやつ”でいなければならない。
そこには1ミリの誤差も許されない。
軽く、チャラく、どこまでも能天気に。
だってそうじゃなきゃ、冬吾に合わす顔がないだろう?



