――少しだけ、昔話をしようと思う。
そう、あれは、中学2年の夏だった、はずだ。
あのとき、いまよりもっと幼い冬吾がいて、同じように幼いおれがいて、そして、おれたちのあいだに、あるひとりの女の子がいた。
冬吾は本当に昔から隠し事ができないやつで、なにも言わずとも、彼女を好きなことは明白の事実だった。
そして、彼女もまた、冬吾のことを好きだった。
この子もかなりわかりやすい子だったから、なにも言われなくともおれにはわかっていた。
そうだな。ちょうど、チィちゃんによく似た女の子だったと思う。
どこからどう見ても両想いなふたり。
いつ始まってもおかしくないようなふたり。
それでも、照れくささと、甘酸っぱさと、幼さに、どうしようもなくすれ違ってしまうふたり。
プラトニックで、純愛で、青春で、もどかしい、
そういうまぶしいほどの恋に嫉妬してしまったおれは、この世でいちばん醜悪だった。
おれはその当時から、いろんな女の子とたくさんの遊びの恋をしていて、冬吾にも、彼女にも、よくそれを咎められていた。
そういう自分は、ふたりとは違う、大人だと思っていた。
――本当は、そうじゃない、冬吾と彼女が持っているようなきれいなものを、
自分も欲しくてたまらなかったくせに。



