なんともいえない沈黙が続いていく。
「……そっか」
けれど、そのあとで降ってきたのは、まるい声と、あたたかい手のひら。
「話してくれて嬉しい、ありがとう」
ぽんぽんと頭を撫でられたら、また涙が止まらなくなってしまった。
とーご先輩の手のひら、本当に、いつも、とても、あたたかいの。
「そんな重大な秘密、おれに教えてくれてありがとう」
この人は、本当に、どこまで。
「ごめん、なさい……」
「違うよ、千笑ちゃん」
「え……」
「いま、おれが欲しいのは『ごめん』じゃない」
とーご先輩が笑ってくれるとうれしくなる。あったかくなる。
だから、くちびるは自然に動いていた。
「……好きになってくれて、ありがとうございます」
「うん。おれのほうこそありがとう」
帰り際、「なにかあったらいつでも相談してほしい」と言ってくれた優しいとーご先輩が、わたしなんぞを好きになってくれたなんて、やっぱりにわかには信じられなくて、あしたには全部夢のなかの出来事だったと錯覚しそうだ。
それでも、かすかに残り続ける胸の痛みは、きっと覚えている。
誰かに好きになってもらうということ。
生まれてはじめて、その幸福と切なさを教えてくれた人のことを、わたしはずっと忘れないでいると思う。



