「…………っ、!?」
「っえ……、」
けれど、その手は、相手が後ずさったことによって、目的地に到達できなかった。
「あ、いや! ごめん! 急に触るから! びっくりして!」
鼻だけにあった赤が、みるみるうちに顔じゅうへ広がっていくから、わたしもつられて赤面してしまう。
「っ、あ、わたしも、すみません、こんな、変なこと、うわあ、すみませ……」
わたしはなんという無礼をしでかそうとしたのだ。
村娘Aごときが、このような高貴なお方に軽々しく触れるなど、絶対に許されないこと。
ぺこぺこ頭を下げていると、なぜかとーご先輩も、負けじと頭を下げるのだった。
「……なんかバカみたいだな」
「……ぷっ」
「なんで笑うんだよ」
「だってとーご先輩がなんかかわいくて」
「それ、ぜんっぜん嬉しくないんだけど……」
そう言って眉をひそめ、口をとがらせるとーご先輩は、なんだか学校で会うのとはぜんぜん違っていて、もっと、なんというのだろう、おこがましいけれど、身近に感じてしまう。
それとも、王子様は、本当は、もっと近い存在なのかもしれない。
お城のなかのことをなにも知らない、村娘のわたしたちが勝手にそう仕立て上げているだけで、“王子様”だって本当は、普通の男の人なのかもしれない。



