ふん、と鼻を鳴らして笑うのが、眼鏡なしの先生の癖なのかもしれない。
眼鏡ありのヨウ先生はいつも、くす、と空気をくすぐるみたいにして笑うのに。
「仕方ないからな、見られちまったもんは、もう」
「でも……」
「まさか俺がなんの保険もかけずに話したとでも思ってんのか」
「ほ、ほけ……ほけん?」
「おまえ、見るからにバカそうだからな。悪意がなくともよけいなこと言いそうだもんな」
バカ、と。いま、そうおっしゃいましたか。
あのヨウ先生が生徒にむかってそのような暴言を吐き捨てるなんて……!
「故意でなくとも、不可抗力でも、バラしたときは、おまえからもそれ相応のもんをいただく」
「……へ、」
「――バラしたら、おまえを犯す」
この低い声に、すでに犯されている、気がする、違う意味で。
「言っておくが、俺は本気だからな」
「…………っ、」
「声も出ないほど怖いか」
「……、あ……」
「まあ、仕方ねえな。いちおう、リハーサル、しておくか?」
まるで足に根が張ったように動けない。
先生が、わたしを見ている。
ネクタイを右手でほどきながら
近づいて、くる。
「なあ、“千笑”」
「―――…やっ!」
わたし、こんなところで大事なハジメテを失ってしまうの……!?



