「――お待たせいたしました、茄子とモッツァレラのトマトソースパスタと、ホタテと明太子の和風パスタでございます」
とーご先輩の手のひらがぴくりと動いたのと同時に、注文したものが運ばれてきた。
完璧な笑顔の店員さんからお皿を受け取る。
とたん、醤油のいい香りが鼻をかすめる。
「うわあ、おいしそう……!」
「だね。あったかいうちに食べようか」
「あ、でも……とーご先輩のお話が途中で、」
とーご先輩は「あとでいいよ」と言って笑った。
少し気になったけど、その笑顔と、食欲には勝てなくて、お言葉に甘えることにした。
「おいしい?」
「はい、すっごく!」
「そっか。よかった」
「先輩のはどうですか?」
「おいしいよ。食べる?」
「え!?」
それは、俗に言う、間接キスというものではないのでしょうか。
それでもそんな意識をしてしまっているのはわたしだけのようで、いたって爽やかに微笑みながらお皿を差しだしてくれるとーご先輩にとっては、べつになんでもない行為みたい。
なのでありがたく頂戴した。
和風パスタのあとに食べると、トマトソースは少しだけすっぱくて、喉の奥がきゅうっとせまくなる感じがする。



